いとま特例とは?日本版DBSで急な欠員が出たときの例外ルールと注意点

いとま特例とは、こども性暴力防止法(日本版DBS)にある例外の扱いです。
急な欠員などのやむを得ない事情で、犯罪事実確認が業務の開始に間に合わないときに使えます。
この場合、従事させた日から原則3か月以内に確認すればよいとされています。
ただし、確認が終わるまでは、その方を「特定性犯罪事実該当者」とみなして措置を取ります。
特定性犯罪事実該当者とは、法律で定める性犯罪の前科があり、一定の期間が経っていない人です。
こどもと一対一にさせないなどの措置に加え、特例を使った理由を示す書類の保存も義務です。
この記事は、こども家庭庁の施行ガイドライン(令和8年9月2日改訂版)をもとにしています。
特例が認められる例と認められない例、取る措置、残す記録を、横浜の行政書士が解説します。
こども性暴力防止法の原則は「業務を始める前に確認」
こども性暴力防止法では、こどもと接する業務に新しく就く方の確認を、業務の前に終えるのが原則です。
犯罪事実確認とは、こまもろうシステムで交付される確認書で、特定性犯罪の前科の有無を確かめることです。
ここでいう期限は、交付を申請する期限ではなく、確認書を受け取って確認を終える期限です。
標準的な処理期間は、日本国籍の方で2週間〜1か月、外国籍の方で1〜2か月とされています。
採用が決まったら、早めに手続きを始める必要があります。
なお、雇用契約が始まっていても、こどもと接していなければ「業務を行わせる」には当たりません。
座学の研修やオリエンテーションだけの期間が、これに当たるとされています。
いとま特例とは?要件と確認の期限
いとま特例の要件
いとま特例は、次の条件をすべて満たすときに使える例外です(法第4条第2項・第26条第2項)。
・急な欠員などの「やむを得ない事情」がある
・業務を始めるまでに、犯罪事実確認を行う時間(いとま)がない
・すぐにその方に業務を行わせないと、事業の運営に著しい支障が出る
ガイドラインは、いとま特例を「真に必要な場合にのみ適用される」例外としています。
人手が足りないときに、いつでも使える制度ではありません。
確認の期限は原則3か月、一定の場合は6か月
いとま特例を使った場合、犯罪事実確認は、従事させた日から3か月以内に行います。
次の場合は、期限が6か月以内になります。
・3か月の期限に十分間に合うよう申請したのに、交付を受けられなかった場合
・合併などの組織変更で事業を引き継ぎ、そのまま事業を続ける場合
認定時現職者は対象外です
認定事業者では、認定の時点ですでに働いている方を「認定時現職者」といいます。
認定時現職者は、認定から1年以内という別の期限で確認するため、いとま特例の対象外です。
現職者の確認期限の考え方は、こちらの記事で解説しています。
日本版DBS施行時現職者とは?確認期限と経過措置【事業者向け】
https://moana-gyosei.jp/2026/06/15/japan-dbs-genshokusha-kakunin/
いとま特例が認められる例・認められない例
ガイドラインには、「やむを得ない事情」が認められる例と、認められない例が示されています。
学習塾やスポーツ教室などの事業者さまに、関係が深いものを紹介します。
認められる例
・急な病欠や辞職、採用辞退などで、代わりの方を採用して従事させる場合
・利用者数が想定を上回ると年度の直前に分かり、短期間で採用して従事させる場合
・採用活動を続けても応募がなく、従事予定日の直前や予定日の後に採用できた場合
・派遣元の都合で派遣労働者の通知が遅れ、従事開始の直前になった場合
・十分な期間を取って申請したのに、従事開始までに交付を受けられない場合
最後の例として、4月から従事する日本国籍の方について、2月に申請した場合が挙げられています。
認められない例
・定年退職など欠員が分かっていたのに、計画的に採用活動をしなかった場合
・確認までの間、こどもと接しない仕事をしてもらっても支障が出ない場合
・契約に遅れはあったが十分な余裕があったのに、確認をしていなかった場合
・従事者が戸籍の情報を出さず、従事開始の1週間前に申請した場合
学習塾では、2〜3月に大学生講師の採用が集中します。
毎年この時期に入れ替わると分かっている欠員は、予見できた欠員と見られる可能性があります。
採用の時期を前倒しし、従事者の方には戸籍の情報を早めに登録してもらいましょう。
いとま特例を使うときに必要な措置
いとま特例を使うと、確認までの間、その方を特定性犯罪事実該当者とみなして措置を取ります。
これは法律で定められた義務です(法第4条第2項ただし書・第26条第2項ただし書)。
前提として行うこと
・できるだけ早く犯罪事実確認を行う
・特例の対象になることや措置の内容を、採用の段階などで本人に伝えておく
・違反した場合は処分の対象になることも、あわせて伝えておく
・必要に応じて、こどもや保護者にも、特例を使う場面があることを説明する
基本の措置(3つすべてが必要です)
・原則として、こどもと一対一にさせない
・いとま特例の趣旨や措置、児童対象性暴力等の防止に関する研修を受けてもらう
・管理職が定期的に巡回し、声をかけるなど
工夫の例として、研修の時間を優先する、一人になりやすいシフトを組まない、が挙げられています。
研修や巡回をしていれば、一対一にしてもよいということではありません。
3つの措置は、すべて取る必要があります。
こどもが複数いても「一対一」とみなされる場合があります。
未就学児や障害のあるこどもなど、発達の段階や特性により、異変に気づいて大人に説明できない場合です。
やむを得ず一対一になる場合
業務の性質上、一対一でないと適切に対応できない相談や面談では、例外として一対一が認められます。
事故や急な体調不良で、その方しか対応できる人がいない場合も同じです。
その場合は、次の対応を取ります。
・事前に管理職などへ、時間・場所・対象のこども・必要性を説明し、了解を得る
・終わったら、管理職などに完了報告をする
・突発的で了解を得られないときは、周りの職員に説明して合意を得る
・できるだけ外から見える場所か、リモートで行う
外から見える場所とは、中の様子が分かる教室や、防犯カメラのある部屋などです。
ただし、通常のシフトに組み込んで長く一対一にすることは、原則として認められません。
いとま特例を使ったら残しておくべき記録
やむを得ない事情を証明する書類の保存は義務です
いとま特例を使ったときは、「やむを得ない事情」のどれに当たるかを証明する書類を保存します。
根拠は、こども性暴力防止法施行規則第29条第3項です(学校などの場合は第16条第3項)。
当事務所では、例えば次のようなものを残しておくことをおすすめしています。
・欠員の理由が分かるもの(退職届、採用辞退の連絡のメールなど)
・採用活動を続けていたことが分かるもの(求人の掲載日や応募状況の記録)
・交付を申請した日と、従事を始めた日が分かるもの
措置を取ったことも記録に残しましょう
ガイドラインは、やむを得ず一対一になる場合、できる範囲で事前に記録に残すことを求めています。
研修を受けた日や、管理職の巡回の記録も、あわせて残しておきましょう。
保護者や行政から説明を求められたときに、措置を取っていたことを示せます。
記録の様式を事前に決めておくと、慌ただしいときでも記録が漏れにくくなります。
対処規程や社内の報告ルールに、特例を使うときの手順と記録の様式を入れておくと安心です。
本当に大切なのは計画的な採用と早めのシステム対応
いとま特例に頼らないためには、次の3つが大切です。
1.採用活動を早めに始め、処理期間を見込んで従事開始日を決める
2.内定が出たら、すぐにこまもろうシステムでの登録を案内する
3.急な欠員に備えて、人員配置に少し余裕を持たせておく
認定後の、こまもろうシステムでの交付申請の流れは、こちらの記事で紹介しています。
こまもろうシステムの使い方【事業者向け】認定後の手続きと管理
https://moana-gyosei.jp/2026/10/20/komamorou-system-jigyosha-nintei-go/
学習塾が認定申請をいつまでに進めればよいかは、こちらの記事でまとめています。
まとめ:いとま特例は狭い例外。使うなら措置と記録をセットで
いとま特例とは、確認が間に合わないときに、従事開始から原則3か月以内の確認を認める例外です。
使えるのは、予見できない事情があり、すぐ従事させないと事業に著しい支障が出る場合だけです。
使う場合は、一対一にさせない、研修、管理職の巡回の3つをすべて行いましょう。
あわせて、やむを得ない事情を証明する書類と、措置の記録を残しておきましょう。
なお、本記事は施行前のガイドラインをもとにしています。
実際の運用では、こども家庭庁の最新の情報をご確認ください。
当事務所では、対処規程などの規程類の整備を支援しています。
特例を使うときの手順や記録の様式、採用から犯罪事実確認までの流れづくりもお手伝いします。
「うちの場合は特例が使えるの?」という事業者さまは、お気軽にご相談ください。
横浜・神奈川の事業者さまはもちろん、オンラインで全国からのご相談にも対応しています。
▶ 日本版DBSについてはこちら
https://moana-gyosei.jp/japan-dbs/
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